おひとり様の遺言1

背景


 遺言者は80歳代前半のおひとりでお暮しの女性の方。ご家族構成は、30数年前に、既に亡くなられた夫との間にお子様はなく、ご親族もお兄様、お姉様、それに妹様がいらっしゃったが、お兄様、お姉様は既に他界され、それぞれの方におふたりのお子様(姪、甥)がいらっしゃって合計4名、妹様と合わせて法定相続人は5名という状態でした。(下図参照)

図 法定相続人5名、亡き兄の子(甥)に財産を相続したい


 財産は、現在お住いのマンションとご自身の出身地の土地、それに亡き夫が生前に購入された地方都市の土地があり、現預金も相当な高額所持されていました。


 遺言者の思いとして、まずご自身の老後のことと、死後のことを冷静にお考えになられていて、将来もしもの時は、遠方にいる親族に頼ることはできない、従って老後の認知症対策や死亡直後の緊急対応などを専門家に任すことはできないか、との思いがあったようです。
 又、相続するであろう財産についても、親族に分散するより、一人に相続させたい。それもご自身の出身地にご主人様のご生前に建てられた墓所があり、その墓所をずっと守ってもらえる人へ、ということで亡お兄様の長男である、ご自身からすれば甥っ子さんに一括して相続させたい、との思いがありました。

ポイント


①法定相続人は甥、姪3人と妹の5名、
②財産は複数の不動産と高額な現預金
③財産を自身のお墓を守ってくれる人に遺したい

対応


 このように、配偶者がすでに亡くなっていて、相続人が兄弟姉妹やその子である甥姪で、相続財産を自身のお墓を守てくれる一人の方へ遺したい、との思いのある方にとって、遺言書作成は絶対必要になります。


 そのことをご理解頂いた上で、遺言書の内容としては比較的シンプルなのですが、その甥っ子さんにすべての財産を相続させる内容の遺言書を作成。この場合、条件付き相続という形で、「ご自身のお墓の管理をご自身の死後何年間することを条件とし、すべての財産を相続させる」といった文言をいれることで、相続に条件をつけることができるのですが、今回の場合、遺言者の方は、「そこまでは不要」とのことでなしにしました。
 

 また、ご自身にとって不安であった、老後の不安については、もし認知症になった場合、ご自身の財産管理と生活療養看護について私どもに委任する内容の任意後見契約を、また死亡後の対応として、葬儀や埋葬、それにご自宅の遺品整理などの業務を私どもに委任する死後事務委任契約を、遺言書作成と同時に作成。それぞれを公正証書とすることでより信頼度が高くご本人にとってご安心できるものとなることで、大変喜んで頂くことができました。