遺留分限度を満たした遺言書

背景

図1,長女はご結婚後別居、次女は独身ご同居

 遺言者は70歳代後半の主婦の方。ご家族構成は、結婚して同一県内の遠方に住む長女(50歳前半)と同居の次女(40代後半)のおふたり。(右図1のような家族関係)


 勤務医であったご主人は30数年前にお亡くなりになっており、現在は前出の次女とのお二人住まい。
 財産は、阪神間の高級住宅街にある一戸建てのご自宅、それに預貯金をはじめとする金融財産が数千万円です。
 この方の思いとしては、できるだけ多くの財産を同居の次女に遺してあげたいということででした。
理由として、まず長女はご結婚されるときに、この方が長女に結婚してほしいと思っていた人とは違う方を選ばれ、半ば喧嘩同然で家を出てしまい、それ以来何十年も交流がなかったそうです。


 一方、次女は、大学卒業直後、この方のお母さん(次女にとってはおばあさん)が介護状態になられ、その面倒を次女に任せないといけない状況になり、そのために就職活動もできず、正社員で採用されることなく、現在もアルバイトやパートといった仕事しかできていないこと、さらに婚期も逸してしまい独身でその方と同居中であること。また、同居であることで将来この方ご自身の老後のお世話も次女にお願いすることになるであろう、と言った事情から次女の将来のことを大変心配され、経済的な部分でできるだけ多くの財産を遺しておいてあげたいということでした。

 長女の将来は、サラリーマンとご結婚され、持ち家もあり、厚生年金受給者となり得ることで、経済的にまずまず安定した老後を暮らせると判断されています。

ポイント


①法定相続人は長女と次女の2人
②財産は不動産を含め高額
③将来のことが心配な次女にできるだけ多く財産を遺したい

対応


 まず、このように財産を相続人によって差を付けたい場合は、必ず遺言が必要であることをご説明。(遺言書なく亡くなられた場合、法定相続だと相続分が長女、次女それぞれ1/2ずつとなることから)

図2,遺留分は全財産の1/2,長女の法定相続割合が1/2、よって長女遺留分割合は全財産の1/4


 さらに、この方の思いとしては、全財産を次女に遺すことも辞さないくらいであったのですが、遺留分制度があり、いかに全財産を次女に遺すという遺言でも、長女が遺留分権利を主張されるとその主張が有効となることをご説明。
 そこで、あらかじめ長女の遺留分相当額(この場合、全財産の1/4、右図2ご参照)を長女に、それ以外のすべての財産を次女に遺す。さらに次女の住む場所も確保するため、ご自宅は次女へと相続財産を指定する。

公正証書遺言の表紙サンプル

 また、何か長女へのメッセージをということで、遺言で認められている付言事項を書かれることをお勧めし、最終的に2ページにもわたる長文をご用意されました。
 内容は、おふたりのお子様を思うご本人のお気持ち、なぜ遺す財産に差をつけたか(次女に対する今までの感謝の気持ちと将来の生活のため)などを詳しく、丁寧に書かれたものでした。

 それらの内容を当方でまとめ、公正証書原案を作成。公証人の先生と打ち合わせさせて頂き、公正証書遺言ができあがりました。
 ご本人に公証センターに出向いていただき、ご署名、ご捺印をして頂き完成しました。

 最終的には遺言者様にとって大変ご満足のいく内容となり、大変喜んでいただくことができました。